ある男の生涯 2
マリアは片腕にまだ赤ん坊の娘を抱き、5歳のチャーサを歩かせて、とうの昔に期限の切れた証明書を手に検問所を通らなければならなかったのです。
運とクリスマス・シーズンが彼女に味方しました。
一人きりで勤務についていた兵士に書類を渡しました。
兵士がそれを丹念に読むのをじっと見ているうちに、マリアは書類が逆さまなのに気づいて、急に元気がでました。
南セルビア人と思われるその兵士はスロヴェニア語が読めないようです。
ばつが悪そうに兵士は手を振って、マリアたちを通過させました。
彼女はやがてバスの停留所を見つけ、トリエステまで乗っていきました。
トリエステでは、ミロスはミラノにいると友人から聞かされました。
大晦日に彼と電話で話すことができました。
トリエステで日付の新しい書類を取るのに一週間かかりました。
7時間バスに揺られてミラノに着きます。
ミロスは停留所で待っていました。
すべてを奪われ、故郷では公けに裏切り者にされ、どこにも確実な未来を見つけることのできないクロフタ一家でした。
それでも彼らは幸運な方でした。
自分の世界を再建するために必要な、そして移動の可能な資本を心のなかにもっている、ごく少ない生き残りでした。